吉村 伸のweb

このWebでは、私が今まで書いたものをまとめたり、最近思っていることを書いたりしています。

吉村 伸の略歴

「日本でインターネットはどのように創られたのか? ―WIDEプロジェクト20年の挑戦の記録」 の執筆、制作には、Graphy CMSが活用されました。私は、「パソコン通信との相互接続」、「コマーシャルインターネットサービスの開始」の2箇所の執筆を担当しました。

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Z003-作るメリット、使うメリット

クラウドというのはネットワークを介して、コンピュータリソースを利用すること一般を指すこともありますが、ここでは、主として仮想化技術を活用して、NISTの定義した5つの要素を満たすシステムのことを指すものとします。

クラウドを作るメリットとしてもっともわかりやすいことは、コンピュータリソースを集中的に投資して、それを分け合って利用することを可能にすることで、それまでばらばらに構築され、ばらばらに運用されているシステムを集約して運用可能にすることができ、投資効率のよいシステムとなるということです。

空いているリソースは、他の仕事のために使えます。共通したものは集中して共有できます。このメリットが活かせるのは、負荷の平準化ができるほどの規模があり、また負荷にそれなりの変動があるものを混在していることです。

現状の技術では、仮想化手法を活用することが一般的です。仮想化は、資源の集約化のメリットもあるので、複数サーバを統合していくことだけを考えても実施は可能です。しかし、固定的なリソースの中で集約だけを行っても大きなメリットを得ることはできません。単にサーバの数を減らす以上の効果を得られることはありません。ましてコスト優先での集約行為は全体の運用にリスク要因を増やすことになりかねません。保守運用のコストを下げることを意識して導入しなければ、自殺行為になるでしょう。

現状は、過渡期であるため、ソフトウエアライセンスの関係からハードウエアを限定するという問題も存在していたりして、まだ矛盾だらけですが、そうしたライセンス体系は自然と淘汰されていき、こうした問題は早晩解消していくでしょう。

ハードウエアを共有し、複数のエンティティでシェアしなければ大きなメリットを得ることはできないでしょう。これは保守運用コストを下げることにもつながります。これが、クラウドサービスを利用することのメリットです。自社でリソースを保有しなければならない事情があっても、保守運用の観点から、サービスを併用してハイブリッド化しておくことはメリットがあります。

これは高速なインターネットが非常に広汎に利用できることになったことが大きく寄与しています。

NISTの5要素を見ると、Rapid Elasticity, On-demand Self Service というものが出てきます。必要なときに必要なコンピューティングリソースを必要なだけ得ることができるということです。システム構築を行っている者にとっては、これを簡単な操作で try and error, scrap and build を繰りかえすことができるというのは、とても大きな恩恵があります。

さて、しかしながら、これらはやはり作る側のメリットです。クラウドシステムを作る人、システムを作る人です。一般のエンドユーザにとってはどうなんでしょう?

一般のエンドユーザ、それもオフィス内でパソコンを使っているだけのユーザには、変化はなにもありません。目の前にあるのは、依然として Windows の画面だし、アプリケーションは同じだし、なんにも変わりません。なんか、ときどき反応が遅くて使いずらい、なんていうのが関の山です。まあ、なにも変わらないから大丈夫ですよ、ということも事実ではあるのですが、それではなんでお金をかけてクラウドシステムにしなければならないのでしょうか?

情報が共有できる、社内のファイルにどこからでもアクセスできる、社内のシステムにどこからでもアクセスできる。確かに技術的に実現できることですが、働くスタイルや、ルールはそうなっていないことが多く、その検討に長期間必要であることから、最新のシステムを企業で使うことはなかなかできません。これは使う側と使わせる側(作る側)双方の問題になります。

いくらシステムを導入しても、大量の資料の紙と、会議会議の連続という仕事のスタイルが変わらなければメリットはありません。

情報には、作成⇒配布⇒使用(活用)⇒保管(保護、管理)⇒廃棄、というプロセスがあるとされています。これを、Information Lifecycle Management といいます。各段階において、適切なツールとルールが存在しなければ、使う側にとってのメリットは生まれません。クラウドシステムは、広汎で、高速なネットワークを内在したものです。したがって、この問題に対していままでと違って適切なツールを提供し、これを広域で共有することができます。

コンピュータシステムとしてのクラウドと、こうしたツールとは両輪であり、両方が実現しなければ、作る側と使う側が目標に向かって真っすぐ走っていくことはできません。

最終更新日: $Date: 2015-02-15 14:10:49+09 $

最終更新日: $Date: 2015-02-02 22:28:33+09 $

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