デジタル写真と銀塩写真
NHK大河ドラマの「篤姫」で、14代将軍家茂と、和宮、天障院が写真を撮るシーンが出てきて、そのあと紙に焼いたような写真を見ているところが出てくる。当時は、ガラス板のはずなのになあ(紙に、乾燥ゲルを塗るジョージイーストマンの発明は、1884年、徳川家茂は、1866年没)とか、露光は最低でも数分かかったのになあとか思うのだが。まあ、ドラマなので大目に見るとして、写真はガラス板や、紙に銀塩ベースを塗布したものから、後に透明のプラスチック系ベースのフィルムへと主力が移る。銀の化学反応を応用した技術であるので、デジタル写真に対比するために、銀塩写真ということもある。
フィルムは、乳剤中の銀塩粒子が像を作る。解像度の評価に関しては、35mmフィルムの標準的なもので、10~12メガピクセル相当と言われている。最高水準の微粒子のフィルムをもってしても、いまやデジタルカメラの方が解像度は高いと思われる。ただし、プロ用の大判フィルム(6x4.5, 6x6 など)での撮影であればフィルムのほうが高い解像度を得られるとも考えられる。ただし、銀塩粒子がランダムに並ぶため、均一な解像度ではないので、実際にはもっと低いと主張する向きもある。
最大の差は銀塩では粒子の配列はランダムであるのに対して、デジタル写真のイメージセンサーは規則正しい配列をしているということである。画面(ブラウン管でも液晶でも)は、発光素子が規則正しくならんでいるので、画面の表示であれば経験があるものとして、モアレ模様という現象がある。これは、光の干渉によって、縞模様を生ずるもので、不規則な配列をしている銀塩写真では起こらないものである。
現在、デジタルカメラで使われているイメージセンサーは、ほとんどはベイヤー配列と言われる方式で、G(緑)の市松模様の残りにR (赤)、B(青)のセンサーが交互に並ぶというもので、緑のセンサーの数が赤、青にくらべ2倍の数ある。実際に画像を生成する場合には、補完処理を行って、各点の RGB の値を作成し、映像化する。この場合に稀に偽色を発生することがある。
1つの点に、RGB3色のセンサーを持つ、FOVEON X3という CMOS センサーもある。こちらの場合、補完処理をしないので、正確な色再現が行われるという利点があると言われている。
さて、問題はこの色再現というやつで、人間の記憶は曖昧というよりは、恣意的なものである。フィルムの時代には、フィルムの乳剤の感度特性によって、色表現が変わる。ネガカラーでは、紙焼きの時点での色の再現性にもう一回不確定要素があるが、リバーサルフィルムであれば撮影時一回だけである。露出の具合にもよって色の再現性は異なってくるが、それ以上にフィルムの特性によって、いろいろな特徴があった。
緑が非常にきれいに出るフィルム、赤がとてもきれいなフィルム、肌色の再現を重視したフィルムなど、その道のプロがその再現について、こだわって作ったもので、芸術的でもある。人の記憶に訴えるような色表現だったりする。
たまに酔狂で、リバーサルフィルムでの撮影をしたりするのだが、いつもその派手な発色に驚く。それに比べると、従来のデジタル写真はインパクトに欠けることがあった。最近は、それに対して、各ベンダーが色表現として特徴的なものを出してきたりしている。
デジタルカメラで撮影したセンサーから得られたデータをそのまま収納したものを RAW 形式のデータと呼び、これを画像に再生することを、写真の伝統にならって、現像と呼ぶ。このRAWデータ現像ソフトの中には、フィルム調V1とか、フィルム調Pなどというテイストパラメータがあり、富士フィルムのVelvia 調とか、Provia 調とかにできるというわけである。
こうした色調の調整が、写真というのが忠実に再生するだけではなく、伝えたいものを伝えるという側面を持っているということでとても面白いなあと思うことである。
それと最近急速に普及してきたと思われるのは、主に純正レンズと純正ソフトの組み合わせで行われる、レンズの色収差の補正である。カメラのレンズは、複数のレンズの組み合わせで、さまざまな収差を補正するようにしているわけだが、補正しきれない部分であってもレンズの特性のデータをあらかじめ登録しておくことで、一定の補正をすることができるというものである。ただ、これは時に、なぜだろうと思うこともある。補正するということはずれたものを動かすわけで、結構やばいかなあと思ったりする。
やはり、写真はレンズで決まるという部分もあり、フィルムのテイストと同様に、レンズのテイスト(切れとか、味とかいう表現をしたりするけれども)があって、それを上手に使い分けるところに面白みがあると思う。ソフトフォーカスなどは、いまやソフトウエアでもある程度、実現できるのだが、もともとはレンズの球面収差を応用して実現したものであったりする。きわめてアナログの産物である。写真は光の芸術ということもあるが、記録素子がデジタル化しただけで、この部分は変わらないというアンバランスが写真の面白さかもしれない。
最終更新日: $Date: 2008-12-07 23:43:30+09 $






