ハーブの利用上の注意

私は、大学院では天然物有機化学の研究室に所属していた。生物化学は、生物が生きること自体の化学的な研究を主とするのに対して、天然物有機化学は動植物の生み出す化学物質の研究という方向性で、生理活性や、薬効と関係することもあり、その場合には、薬学系の分野に近い。植物内での、テルペン系化合物の代謝や、生成過程を研究 することが多い。私も、シンジュ(ニワウルシ)属の苦味成分の研究を行った。

そのため、精油、テルペンに関する学会にも所属していたので、こうした植物成分に対しては実はとてもなじみがある。ハーブや、アロマテラピーの専門家ではないが、お隣くらいだったりする。

前置きはここまでだが、人間の生活や、生命にとって有用な植物を総称して「ハーブ」と呼ぶ。和漢薬でも、植物を原料とするものは多いので、これら植物由来のものはそういう意味合いにおいては同じくハーブである。ハーブは、スパイスとして、食品に活用されるもの、アロマテラピーや、ハーブティのようにある種の効果を期待して用いられるものがある。

植物に関しては、法律により規制されているものもあるし、薬効を明確に標ぼうした場合には、薬事法等の関連法令により規制対象になる。また、食品に関係する各種法令にも規制があるので、扱いには十分注意していただきたい。

また、植物由来成分には、かなり強い毒性を持つものもあるので、いい加減な知識で使用するのは危険である。また、たとえば、葉は薬として利用されるものであっても、根には毒性があるというものも存在している。

そのため、自身の健康に関する問題については、専門家のアドバイスに基づいて適用していただきたい。ここに記述するのはあくまで一般論である。

通常、ハーブとして、利用されるものは、食品として利用する範囲で有効なものだ。大量の摂取は想定してはいない。したがって、植物体をそのまま利用するのは、スパイスや、お茶といった用途だ。アロマテラピーで使用する精油(エッセンシャルオイル)については、非常に高濃度の成分となるため、一部の例外を除いては、直接肌に触れるのも危険なことが多い。薄めて利用するか、気化させて、芳香浴で利用する目的での使用となる。

ハーブの効能に関係する植物成分の代表的なものは、テルペン、アルカロイド、ポリフェノール、フラボノイドおよびその配糖体である。配糖体は水溶性となるので、ステロイドやトリテルペンの配糖体であるサポニン類、フラボノイド配糖体などは、お茶や煎じ薬に、多く含まれることになる。このように、有効成分をどのようにして摂取、抽出するかによって、どのような化合物を多く含むかが変わってくる。お茶、煎じ薬、ハーブティの場合、熱水抽出ということになるが、水溶性の成分を中心として、低分子の芳香成分が中心となるだろう。

アロマテラピーで用いられる精油は、主として揮発性成分を多く含むものであり、主にテルペン類で、一部低分子の芳香族化合物を含む。エッセンシャルオイルを作る方法は、水蒸気蒸留、溶剤(アルコール、エーテル類)による抽出、圧搾法などがある。柑橘類の果皮から抽出する場合には、圧搾法が利用されるが、不純物が混じりやすく、フロクマリン類などの混入があると、光毒性があるので注意が必要となる。

梅酒は日本の代表的なハーブリキュールであるが、通常アルコールが約35%のホワイトリカーを使用する。熱水抽出よりも脂溶性成分が多くなるのと、加熱しないので熱変性しやすい成分の利用には好都合であるが、水には溶けない成分が多く抽出されるので、普段はお茶として利用するようなものを使うには、注意が必要となる。オリーブオイルにハーブを漬け込んで、香りを移す使い方も同様に脂溶性成分を抽出する方法である。唐辛子を漬け込んだオリーブオイルなどは代表的なものだろう。

ハーブは、単体で用いられることも複数組み合わせることもある。これに対して、漢方薬は、単一の植物だけではなく、必ず複数の植物を組み合わせて用いる(一部の例外はある)。これが漢方薬の漢方薬たるところである。薬効成分の研究においては、単一の成分を追い求めることが多いが、この組み合わせをして、投与するところが漢方医学の妙なのだろう。

最終更新日: $Date: 2008-12-07 23:46:19+09 $

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