ネットワークの距離

昨日、CSI (中四国インターネット協議会)のFinalシンポジウムに行ってきた。

JNICの発足などの日本のインターネットの黎明期の中で、早い時期に活動を開始した地域ネットワークプロジェクトである。私も初期には、何回か講師を務めた。約15年前のビデオなども紹介され、さすがに若かったなあと、懐かしく思った。

今回、15年間の活動にピリオドを打つわけだが、記念のシンポジウムで、札幌医科大学の辰巳さんが、話をした。彼が医療におけるインターネットやITの活用を本当にこの15年ずっと続けている人で、北海道の地域ネットワークプロジェクトの NORTH の中心人物でもある。

講演の主題は、医療関連の話なのだが、久しぶりにこの話を聞いた。

「数百メートルしか離れていない別の病院との間の通信でも、東京を経由するので、遅い」

というやつである。

同じ ISP につながっていれば、同一都道府県内あるいは、悪くても関東、東北、北海道といった地域内の POP で折り返して、通信が行われるので、最近のBフレッツだと往復で遅延が 10ミリ秒程度で収まっている。しかし、これが異なる ISP に加入している場合、東京でしか相互接続していないので、北海道の場合、往復で約2000Km で、50~70ミリ秒かかるのではないかと思われる。まあ、昔にくらべればネットワークが高速になっているので、たいしたことないといえばそれまでだが、より高速な通信を必要とするアプリケーションでは、この程度の遅延でも、不便なことは起こりうる。

現在、ISP間の相互接続は、主に東京と大阪で行われている。それ以外での接続は非常にすくない。そのためこういうことが起こるのである。P2Pトラフィックが異なる ISP 間で行われるとき、相互接続点にかかる負荷が非常に大きくなるというのも、P2Pが嫌われる問題の一つである。

これは、たとえ同じ NTT のBフレッツを使っていても、一旦それぞれの ISP のバックボーンネットワークに集められて、そこから別の ISP への接続される。隣の家との間であっても、別の ISP であれば、1000Km 以上の距離があることになるということが起こる。通常のフレッツのサービス形態である。

これを解消するために、地域 IX を各地域ネットワークが中心となって推進した時代があった。もっとネットワークが細い時代には遅いという問題は深刻だった。しかし、実際には、全体のトラフィックという点では、一般の利用は、東京のデータセンターにあるサーバを見に行くトラフィックや、海外へのトラフィックが支配的であるため、ISPの経営的に見た場合、成り立たないということになり、結局実現しなかった。

しかし、ここで問題なのは、結局、同じ ISP であれば、フレッツだと、少なくとも各都道府県内の POP で折りかえすということである。なので、隣の病院が同じ ISP に加入すれば問題ない。

さて、NTTの Bフレッツを利用している人は多いと思われるが、ISP はばらばらだろう。ところが、現在 Bフレッツについては、IPv6が利用できるようになっている。この IPv6は NTT 東日本はその域内のみ (NTT東日本は、ドットネットの契約が必要なことがある)で、NTT西日本もその域内のみで、この両者も相互には接続されてはいない。

しかし、加入者同士の間は IPv6での通信が、ISP とは無関係にできる。それに、IPv4のように PPPoE などのトンネルをすることもなく、いわばネイティブな(自然な) IPv6のネットワークなので、隣は本当に隣で最短のルータで折りかえす。実はこういうネットワークがすでに運用されているのである。これは、その筋ではよくしられた事実であり、知っている人は、拠点間の接続にこれを利用している。専用線に比べて圧倒的に安価であり、VPN に比べてパフォーマンスが高い。

同じことは、PPPoE を採用してはいないヤフーBBでは、やはり同じヤフーBBの中では最短で通信できる(セキュリティ面の問題で加入者同士の通信を禁止している場合を除く)。

ネットワークにはこうした特性、問題点があるので、相互に通信をしたい場合には同じ事業者を選択する(これをネットワークの外部性と言う)ということになる。インターネットはつながっているからまだいいようなもので、それ以外のネットワークサービスではそもそもつながらないので、同じ事業者サービスを利用せざるを得ない。

こういう事実が存在するが、現実には、全体としては加入者同士の通信量は非常に少ないので、民間企業ISPでは、経済性から考えるとそういう運用、構築形態を優先することはない。結局、自分で運用して、隣との間に直接線を引いてくださいということになる。

BフレッツのIPv6では、すでにこういう世界が実現しつつあるので、これを相互接続して欲しいという要望はあるのだが、他の要素が十分に優先するというのが現実である。

最終更新日: $Date: 2008-10-25 09:54:21+09 $

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