IPアドレスの割当
IPアドレスが枯渇する。IPv6へ移行しなければならない。
と言っているのだが、どういうわけか一向に進まない。危機感があるようには思えない。なぜなんだろうか。
IPアドレスの不足が声高に言われるようになり、アドレスの割り当てが異常に厳しくなったため、アドレスを節約する技術もたくさん生まれた。アドレスを接続の都度、割り当てる方法、内部のプライベートアドレスをゲートウエイの1つのアドレスに対して読み替える方法などである。
割り当ての方針はどうなっているかというと、実は私も、JPNIC発足初期にIPアドレス割当の担当の委員会の委員長を1年間していたことがある。IPアドレスの割り当ては、新規に割り当てを受けようと思うものには非常に厳しい。私の時には、必要なものには割り当てられるように、しかし、無駄が出ないように ということで、原則小さいブロックを割り当てる。この場合には特に審査をしない。これを使い切ったら、次を割り当てる。ユーザが不便を被らないように、最初の割り当て時には、一定期間、となりのブロックを開けておき、すぐに使いきったときには、連続のブロックを割り当てるようにする。 というような単純なルールを設けた。
現在は、小さいブロックは接続を実際に行う ISP に割り当てを委任しており、大きなブロックの割り当てを受けた ISP がサブブロックの割り当てを行っている。概ね上記のような方法で行っている。
この方式は、アドレスの割り当ての無駄をなくすだけではなく、経路情報を ISP ごとに集積 (aggregate) できるようにすることも目的である。インターネットの経路情報は、インターネットの発展とともに増え続けている。できれば細かい経路情報を流さずに、集積できれば減らすことができる。この方式の欠点は、接続する ISP を変更するとアドレス変更をしなければならないということである。
ところが、これは JPNIC ができたあとの話で、IPアドレスはその前から割り当てられていた。インターネット発祥のアメリカでは言うまでもない。日本でも、古い割り当てのなごりがある。
133/8 という JAPAN-INETというブロックがある。これは、JPNIC 発足前に割り当てられたもので、前半はおおむね大学に、後半が民間企業に割り当てられている。これは、村井研究室で割り当てを行った時代のものである。これは、現在もほぼ当時の割り当てのままになっている。
43/8 というブロックもあったが、こちらは再割り当てが行われ、ISPのアクセス網用に使われている。ただし、これに関しては IPv6 への移行までの暫定的な割り当てということで割り当てされたが、現に移行は起こっていないので、そのまま使われている。
133/8 の割り当て状況は、JPNIC の whoisデータベースで参照することができる。大学では、すべてのコンピュータがグローバルアドレスである必要があるが、民間企業でそのような運用を行っていることは皆無といってもよく、ISPでユーザ用に割り当てるのでなければ、有効に利用されている部分はごく小数だと考えられる。
それに、10年前ならいざ知らず、現在はPCにアドレスを自動的に割り当てる技術も格段に進歩しており、むしろ、そのような管理をできる機材を用いたほうが、セキュリティ的にも優れていると思われる。こうした機材は、ホテルや、公衆無線LANなどを管理するのに使われていることが多いが、一般企業内で使う場合にも優れた機能が多数備わっている。
アドレスを変えられませんというほうが、技術的に劣っていることを露呈しているようなもので、極端にいえば、内部の一般のネットワーク利用者にはほとんど気づかれることなく、アドレス変更を行い、こうした貴重なアドレスを返上することができるのである。
世界的に、このようなインターネットが世界的なオープンなネットワークになる以前に割り当てられたアドレスの存在があり、そして実はいまの技術水準からすれば、事実上まだ膨大な量、埋蔵されているということになる。
IPv6が不要で、いまのIPv4 で十分という人の主張はこうした部分にある。
経済学者などの中には、こうしたアドレスをオークションで再割り当てすれば、IPv6は不要であるということをいう人もいる。これは経路情報の問題があるので、小さいブロックの再割り当ては、かえって害になる。そうすると大きなブロックが対象になるが、そうしたブロックを昔割り当てをうけたのは、それこそ世界でも名だたる大企業ばかりである。
そうした企業になにも経済的利得を与える必要はない。なぜなら、いまアドレスを必要としている国の多くは途上国であるからだ。
しかしながら、こんなつまらないことで争うより、さっさと IPv6 に移行するほうが得策であるし、経済効果も高いのではないだろうか。2011年にアナログ放送が終了するなら、2012年にIPv4の利用を終了すると宣言してはどうか。きっと、2000年問題同様に、第3次ネットバブルがやってくるのではないだろうか。半分冗談のような話だが今の経済状況とインターネットの重要性を考えたら、最大の景気刺激策になるかもしれない。
最終更新日: $Date: 2008-11-08 00:14:12+09 $






