YAMAHA RT-100i誕生秘話

IIJが設立して間もない、オフィスが溜池の現在NTTdocomoのビルの建っている場所にあったときのことだったと思う。たぶん、村井さんがこちらに振ったのだと思うが、ヤマハの方がたずねて見えた。

YAMAHAは、ISDNのコントロールを行うチップセットを持っており、これでプロダクトを作りたいのだが、どんなものがいいかということであった。おそらくいろんな人に相談に回っておられたんだろうと思う。

WIDE Project では、Sun のワークステーションを使い、Sunのシリアル回線用のルータソフトウエアの Sunlink IR を使って、ISDN の 64Kbps での利用を実験していた。しかし一般にはまだ、PPPは普及していなかったので、PCで直接ダイアルアップIP接続を行うということは始まっていなかったと思う。

ヤマハの人は、RS-232Cでは、38400bpsまでなので、64Kbps を使いきれないということで、Ethernet で接続して擬似的にモデムのように見せるような箱はどうかというようなことを言っておられたような気がする。

私は、「普通のルータを作ってください」とお願いした。まあ、実は WIDE でSunを利用して作っていたものは、ヤマハの人も知っていたので、同じ機能を実現することはそんなに難しいことではないという認識だったが、それがニーズがあるかは当時の状況では確信は得られなかったであろう。

数ヵ月後、RT-100i のプロトタイプが出来上がってきた。完成度の点では十分であった。0.1~0.3秒程度で ISDN 回線の接続が確立する。たぶん、ISDN を使っているといわなければ、64Kbps の専用線で接続していると言っても分からないというものだった。外見の大きさは、後に製品となるものとほぼ同じものであった。数台のプロトタイプをお借りして、テストを重ね、ファームウエアのアップデートに協力した。NATや、IPマスカレードの機能も初期から実現していたし、簡単なフィルタリングもでき、「ちゃんとしたルータ」として完成してきた。

さて、ちょうど IIJ 東海のオープニングのために、名古屋を訪れていたときに、ヤマハの方も来ていた。そこで、どう販売するのかという話になったら、ネットワーク機器ベンダーから OEM販売するという計画を聞いた。なんで YAMAHAブランドで出さないのか、となんであんなに熱くなったのかと思うくらい熱弁をふるった。YAMAHAのブランドは、楽器やバイクなど非常にイメージがよく、ネットワーク、コンピュータでは実績はないが、候補になっているベンダーよりはるかに一般に対するイメージがよい。これからインターネットは一般のものになるのだから、マイナーなネットワークベンダーよりいいんだ、みたいな感じだったと思う。

ちょうど、そこに住友商事の名古屋支社で部長をしておられた、吉井氏がいて、私がすごい剣幕だったので、なにごとかということで間に入られた。住友商事はYAMAHAと取引もあり、住友商事が販売に協力するということを検討するということで引き取っていただき、そして、「YAMAHA RT-100i」 が誕生した。

最終更新日: $Date: 2008-10-17 23:02:31+09 $

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