インターネットの電子メール(3)

 現在、インターネットは非常に便利になって、日本では光ファイバーによるインフラの普及もあり、高速な接続環境が広く提供されている。アプリケーションは、Web の技術をベースにしたものがほとんどであり、動画を含めてさまざまなものが利用できる。

 さて、この環境がもし先にあったとしたら、電子メールに画像やファイルをくっつけて送るサービスは作られただろうかと考えてみた。

 それを考えるヒントは、カメラ付き携帯電話である。2000年11月に初の内蔵型カメラ付き携帯電話であるシャープ製「J-SH04」が発売された(出典Wikipedia) 。意外に遅いことがわかる。さらにWikipedia によると、『翌年の2001年夏季キャンペーンより「写真付き写メール」という名称を付けたところ大ヒットとなった。』ということだ。

 2000年というと、ネットバブル期であり、4月に楽天の上場、12月にフレッツADSLのサービスが開始している。したがって、インターネットはすでに普及期に入っていたのである。

 一旦、ここで技術的な問題に戻ることにする。

 1984年の JUNET の実験の開始で、重大な問題は、メール(実際にはネットニュースのメッセージも同じ)での日本語の使用である。当時は、研究者のネットワークであったので、研究者は英語が使えるだろう、ということで英語で十分という議論もあった。しかし、実際にはローマ字表記のメールが飛び交ったりして、そうもいかないことも確かだった。

 すでにこの時点では、パソコンで日本語(漢字)が使える状況であった。パソコンで日本語を扱うために行われたのは、2バイトコードの導入と、シフトJISコードの採用である。

当時のコンピュータシステムでは、8ビットのうち最上位ビットは別の目的で使用し、文字コードは、7ビットで表すというのが一般的であった。その後、8ビットクリーンにしようという努力が行われ、現在はそういうことは行われていない。

漢字を表す文字コードも基本的に、7bit x2 で表現される。しかし、シフトJISは、MS-DOSで漢字を扱うために、そういう意味では最上位ビットを別の目的に使う方式の一つとして考案された。パソコンでは、すでにJIS X0201(当時JIS C6220)の8ビット符号化のいわゆる半角カナが使われていたために、1バイト目で文字種を判別できるように空き領域を巧妙に利用する方式が考案され、利用されていた。

これに対し、通信を伴うシステムでは、最上位ビットは、データとしては途中経路でマスクされて通過できない。

この当時、メールでテキスト以外のものを送ることが全くなかったかというと、そうでもない。通信は、UUCP で行われていることが一般的だが、UUCP そのものも 7bitだけしか通過できないので、バイナリファイルを送るためには、uuencode/uudecode というプログラムが利用され、7bitにエンコードして送る必要があった。これがメールやニュースで利用されることがあった。

 そのため、文字種の切り替えには、エスケープシーケンスが利用されることになる。 代表的なものに、ISO/IEC 2022 (JIS X 0202) における文字集合の指示・呼び出しのシーケンス(漢字シフトコードも参照)や、ISO/IEC 6429 (ECMA-48、JIS X 0211) の画面制御シーケンス(いわゆる「ANSIエスケープシーケンス(英語版)」)がある。(Wikipedia)

JUNETでは、このJIS X 0202 を利用し、日本語(漢字)を表記するようにした。のちに、ISO-2022-JP という文字コードセットとして定義されるものである。 よく半角カナは使わないようにと言われるが、理由には様々なものがあり、2バイト文字(全角)と重複するというものや、濁点、半濁点が別の文字として追加されていることなどが挙げられるが、実装上は、JIS X0201-1976のエスケープシーケンスを解釈できるものも多く、適切にエンコードすれば表示はできた。

ただし、Subject を含むヘッダ部分に関しては、文字コードとして、0x00~0x1Fを許容していない(行末を除く)ので、MIMEヘッダが使用されるようになるまでは、日本語は使用できなかった。

1992年に、RFC1521, 1522 として、MIME (Multipurpose Internet Mail Extension) が提案された。RFC1521 は、後に RFC2045, 2046 として改訂される、メール本体 (Mail Body) の方式と、Content-type に関する定義、RFC1522 (RFC2047)は、メッセージヘッダに Non-ASCII テキストを入れるための方式である。

RFC1522は、1992年のパソコン通信とインターネットの相互接続において、パソコン通信側から送られるメールのタイトル(題名)をインターネット側の Subject に入れるときに早速利用して一気に普及した。

RFC1521のマルチパートによるメールの利用、後に添付ファイルとして広く利用されるわけだが、いつごろから本格的に使われるようになったかと思って、昔のメールボックスを調べてみると、WIDEの実験として送られてきたメールを除くと、1995年に Powerpoint のファイルを添付したメールが見つかった。メールヘッダから推測すると、Windows 3.1 で、NetManage社のChameleon というアプリケーションを使ったものと思われる。

この後、Windows95 が発売され、一般にはインターネットの普及はWindows95 によって加速したといわれているが、Windows95 には当初メールソフトは付属していなかった。Outlook Express は、Internet Explorer のアップデートと同時に提供されるようになり、Windows 98 では標準添付になった。

Microsoft Office に含まれる Outlook もメール機能を有しているので、Windows 98 より、Office 97 (1997年1月日本発売)が先に発売されていたことになり、この時期から、添付ファイルが一般に利用されるようになったのではないかと思われる。

Outlook, Outlook Express には、大きな添付ファイルを自動的に分割し、自動的に結合する機能というのが提供され、その大きさは、60KBがデフォルト値として設定されていた。現在に比べると非常に小さいものである。UUCPでの区間がある場合、50KB 程度で分割するということが行われていたので、その影響だろう。

こうして見ると、2000年のカメラ付き携帯電話は、この後ということになる。 i-mode, EZ-web といった、携帯電話によるインターネットサービスは、1999年に開始されており、この時点でインターネットとの間で電子メールが交換できるようになっている。

カメラ付き携帯電話の写真は、当初は同一キャリア内でしか交換できなかったような気もするのだが、おそらくそれは短期間だったと思われる。携帯電話による写真付きメール、いわゆる「写メール」「写メ」などは、少なくともインターネット側に出てくる時には、MIME になっていたが、これがゲートウエイで変換されていたのか、もともとそうだったかはわからない。パソコン通信の場合と同様に、文字コードの変換等を必要とするため、ゲートウエイで変換が行われていたのかもしれない。それよりも、当初は今のように jpeg ではなかったのではないかと思われる。

こうしてみると、必ずしもカメラ付き携帯電話が、MIME や、添付ファイルの爆発的普及の原因だったかというと、そうでもなさそうである。ただ、時期的に付合していることも確かだ。

さて、携帯電話とインターネットとの間で電子メールの交換ができるようになったことは確かに便利なのだが、これはまた別の問題を引き起こすことになった。それはスパムメールである。携帯電話のメールの世界では「迷惑メール」と呼ばれた。携帯電話で先に大きな問題になったのは、そうした迷惑メールにも費用がかかるからである。そのため、受信してから排除するということではなく、メールアドレスをより複雑なものにするとか、時々変更するとか、今にして思えばかなり迷惑な対策が推奨されたものである。 スパムメール対策は、インターネットに長く携わっていると、一時期かならずかかわることになったものの一つともいえる。セキュリティ問題として最初に顕在化したものともいえる。次は、スパムメール対策について述べることにする。

最終更新日: $Date: 2016-11-18 12:38:27+09 $

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