MEXの再出発は?

MEXは、フリービットの子会社となり再出発することになった。私もアドバイザーという形で関与、復帰することになった。しばらくは微妙な問題があったので沈黙を守る必要があったが、そろそろ今後の方向性を話せる段階になってきたと思われる。

MEXは、かれこれ3年以上、時間が止まったようなものだろう。ライブドア事件に始まり、日本SGI資本に変わったが、私は追われる形となり、社会ニーズにあったデータセンターサービスを提供することはできなかった。

日本SGIはSaaSを標榜したが、実態として提供したのは、SoftEther ベースの VPN サービスのみであった。SaaSは確かに今後の主力になる一つのサービスである。私のグラフィでもSaaS型でCMSサービスを提供している。しかし、SaaS型のアプリケーションサービスを受け入れてもらうのは、なかなか大変なことである。情報を管理するリソース自体が、自己の資産ではない状況は、日本の今までの企業文化にはなかなか馴染みにくい。情報の社外への持ち出し等のルールの解釈を相当綿密に建てつけを直さないとすんなりとは入っていけないだろう。

Blog, SNS といった個人利用が主体で情報管理的な要素の少ないものはまさに SaaS, ASP として発展した。個人が個別にサーバを持つことは難しいので、機能だけをサービスとして利用するというものだ。

信頼性の高いサービスを1台のサーバだけで実現するのはむしろ難しい。大きな1つの箱にいれた高価なシステムというのは存在するが実はその中には各要素が複数、冗長化して構成されてる。MEXのネットワークは大きなネットワーク装置を中心に置いて構築するのではなく、中規模なネットワーク機器を網の目のように構成して、1台のルータや、スイッチが故障してもネットワーク全体のサービスにはほとんど影響を及ぼさないように構築されている。

こうした、高信頼、高可用性(High Availability, HA)システムの構築は、なにも新しい技術ではないのだが、そこそこの規模がないと難しい。しかし、こうしたシステムの上に SaaS型でサービスを構築してそれを提供すれば、ユーザはこうしたメリットを安価に容易に享受できる。グラフィCMSシステムは、Webアプリケーションの基本部分について、こうしたことが可能になるように構築してある。ファイアウォール、IPS、ロードバランサを一体とした UTM の採用、UTM 配下に冗長化された Web サーバ群、背後を支える HA 構成の DB/ファイルサーバという構成である。まだ道半ばであるが約2年間無停止でサービスを提供してきている。 もちろん、途中では個々のサーバには障害が起こり、対応を必要としたが、外から見た場合にはサービスは停止していない。

余談だがこうしたトラブルはなぜか週末に起こり、スタッフをあわてさせる。しかし、冗長化された残りのサーバが同時に停止する確率は極めて低い。そのため営業日を待って対応できるので、余計なサポートコストを払う必要はない。

さて、基本的にMEXの今後の新サービスについては、グラフィのサービスと従来のMEXのサービスの間を埋めることになる。従来のMEXは、一部にサーバを含むマネージドサービスを提供したが、ハウジングサービスが主体で、サーバは利用者が調達して持ち込むスタイルである。このサービスを作ったのも私ではあるが、当時は我々がそうであったように、ベンチャー企業のエンジニアが好きなようにサーバを選び、ソフトウエアをインストールし、開発をするということを競った時代で、ソフトウエア技術の変化も激しかった。余計なお世話をしないということで、環境重視のサービスとしてMEXのハウジングサービスが提供されていた。

しかし、近年はインターネット技術を必要とする人の範囲は非常に大きくなり、そのニーズも大小さまざまになってきた。MEXのユーザにもホスティング事業者が多数存在していた時期をあったので、MEXとしてこうした事業者と競合する分野に参入することは慎重に構えていた。

最近、クラウドコンピューティングという言葉が流行してきた。Google のサービスが強調されすぎて、かなり誤解を招いている部分もある。Google の場合は、Gmailや、Google Apps をはじめとする、従来はマイクロソフトがパッケージソフトウエアとして提供してきたものを、ブラウザの向こう側で提供するというものである。Google は、検索サービスや、書籍のデジタル化などで、知識情報のネットワーク化を推進しているので、Google にサービス内に置いてある自分の情報が Google に利用されるというという誤解が起こっている。実際には、Googleといえども、個人のメールやデータを利用するということはあり得ない。

ブラウザ経由で提供するスタイルをとる業務用アプリケーションの Salesforce.com もかなり業績を伸ばしているわけだが、こうしたサービスを利用した業務の内容が、他社の情報と混じることはないし、ネットワークに簡単に流出するものではない。今のインターネットの技術は、暗号化技術により、認証と秘密保持を可能にするようになっているし、サーバ上に情報を安全に格納する技術は別に昨日今日始まったものではない。技術を正しく使えば、インターネット経由で、しかるべきレベルの情報管理ができるようになっている。

インターネットを経由して、コンピュータリソースを利用する、提供するという手法の発展系として、既存の高信頼化の技術によって構築されたさまざまな要素を、必要なだけ組み合わせて利用するという手法、従来はホスティングという形で、かなりサーバハードウエアと結びついた状態であったものを、個々のサーバハードウエアに直接結びつかない、高信頼化された要素の一部のリソースを利用できるサービスを提供するということが最終的な目標になるだろう。

当初は、現行のシステムをスムーズに移行するための仮想化技術を併用しながらサービスを提供することになるだろう。7月初旬に発表会が予定されているので、現在検証作業を進めているところである。

最終更新日: $Date: 2009-06-04 11:37:04+09 $

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